僧侶の花押

住職のおはなし

テレワーク(在宅勤務)が推奨される中、日本の印章文化が普及の妨げになっていることが話題となりました。私たち僧侶も日頃の活動の中ではんこを押印することが多々ございます。そして特殊といえますのが「花押(かおう)を入れる」ということにつきましょう。

皆さまは花押(かおう)という言葉をご存じですか。花押とは走り書きの署名と申しましょうか、名前を図案化したサインのようなものです. 住職を勤めておりますといろいろな場面でこの花押を書かせていただくことがあります。お礼状を書くとき、又は信仰の対象となるご本尊や仏像を一妙寺よりお授けしたとき、証跡として花押の筆を走らせます。

花押を入れる前に名前を書くのですが、私たち日蓮宗の僧侶の場合は「僧名」ではなく「日号(にちごう)」を述べることがひとつの風儀といえます。日号(にちごう)とは身近な例で申しますとお戒名のようなものです。

例えば私、赤澤の僧名は貞槙(ていしん)ですが、日号は日延(にちえん)と申します。数年前に100日荒行へチャレンジした際、ひょっとしたらそのまま命を仏さまの元へお返ししてしまう事になるかもしれないので、万が一に備え修行前に師匠から戒名を授かってから荒行を始めたのです。

名前は身近ですが日号はなんとなく高貴な感じが致しませんか?故に私たちは故人さまへ引導をお渡しするお葬式の場面、新しくお迎えする仏像を開眼する慶讃の場面など、ここぞという時は日号を使うことが習わしとなっております。日号のあとに花押を併記する点が大きな特徴といえます。

普段の生活ではなかなか馴染みのないこの「花押(かおう)」という言葉、印章捺印の文化と共に是非この独自の趣がある花押にも着目してみてください。

日蓮聖人の場合
幼名 善日麿(ぜんにちまろ)
僧名 蓮長(れんちょう)
日号 日蓮(にちれん)

赤澤の場合
幼名 啓介(けいすけ)
僧名 貞槙(ていしん)
日号 日延(にちえん)

 

 

 

 

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