七面山別当さまのお話

住職のおはなし

人が社会生活を営む上でトイレは欠かせません。それは山の上でも同じことです。日蓮宗には「七面山」という標高1982メートルの山岳信仰の霊場がありますが頂上には最大1000人の方が泊まれる宿泊施設がございます。

 七面山は身延山久遠寺の飛び地ということもあり、昔から久遠寺の脇を固める「身延山支院」のご住職さま方が交代で別当(べっとう、七面山を統括、監督する立場のこと)を務められます。令和元年7月より令和5年3月まで、別当職を任命されたのは一妙寺とも縁の深い身延山清水房住職、内野光智上人でした。

 令和元年末、新任の別当さまにコロナ厄災が降りかかりました。七面山への参拝、宿泊者が皆無となり収入が途絶えました。法が足枷となり国からの助成金をいただくことも叶いません。
 着任早々、自分の俸給を職員の給与にあてる日々が続き、大きな試練に直面された別当さまですが、さらなる困難が襲い掛かります。それは「浄化槽の機能停止」でございました。

 コロナ禍に加え、山間部という僻地、資材の運搬方法などを考慮すると浄化槽新設費用は膨大に増えます。山積する問題に悩み、途方に暮れていた別当さまですが、なんと3年半の任期のうちにこの大事業を成功成就にみちびかれました。次代に債務や後処理を引き継がせることなく、すべてを解決させてから円滑にバトンを渡せることは、内野別当さまのご人徳によるものでしょう。

 詳細を紙面に残すことは控えますが、実情をのぞくと深い雪の中浄化槽内に溜まった汚物や地中に埋まった屎尿の取り出し、2000メートル下の麓までの運搬、汚物を扱う危険な作業を業者の方に任せることなく、七面山職員と有志の方と共に内野別当さまは自らがからだを使って働かれました。 
 長年蓄積されたものを基準の満たすところまで整えられたご苦労は想像に難くありません。普通ならば浄化槽新設計画、資金の調達だけで思い悩み、苦悩との戦いで頭がいっぱいになるわけです。

 こういったご苦労を一言も口にされない内野別当さまの優れた人格に、私共は心から敬意を表したいと思います。任期満了に伴う退任を惜しまれる声が絶えませんが、偉大なる内野別当さまを見習い私も努力してゆきたいと思います。そして内野別当さま、これからは少しお体をいたわりお休みになってください。本当にお疲れさまでございました。

 
一妙寺住職 赤澤貞槙 拝

ピックアップ記事