「未来の布教へのヒント」 ゼロからの檀信徒布教 ~国内開教寺院を参考にして~

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「未来の布教へのヒント」 ゼロからの檀信徒布教 ~国内開教寺院を参考にして~

元浄土宗国内開教使
東京教区林海庵住職 笠原泰淳

国内開教を公開カンファレンスのテーマとするのは今回で二回目である。前回は浄土宗の(元)国内開教使三師をお迎えし、その取り組みやご苦労などを発表して頂いた。今回は国内開教に取り組む他宗の(元)開教師、日蓮宗一妙寺(東京都国立市)の赤澤貞槙師をお招きして、私(笠原)との対談形式で進めさせて頂いた。

赤澤師は現在36歳。日蓮宗国内開教師(浄土宗では開教「使」という呼称だが、日蓮宗では開教「師」)の第一号であられる。在家出身ながら中学生のときに日蓮宗僧侶になろうと決心し、全寮制の身延山高校へ、さらに立正大学へと進まれた。のち都内の寺院に勤務されたおり、檀信徒の素直な声を耳にする中で、寺院の立場と檀信徒の気持ちとの間にある大きな温度差を痛感したという。この温度差を何とか埋めてゆきたい、と願う折から、日蓮宗に国内開教の制度ができると聞き、早速開教師に応募された。

初めは「開教の王道を行こう」ということで、日蓮聖人にならい辻説法から始められた。だが駅前に立っても誰も振り向いてくれない。「早々に挫折した」という。やがて師を応援するご寺院からの依頼を受け、一座の法話を行う機会に恵まれた。本堂に集まった檀信徒は熱心に耳を傾けてくれ、拍手まで起こった。「自分の居場所はここだ」と強く実感された。それからは、当初の「布教活動の中からご縁が生まれ、やがて法務につながる」という方法論を転換し、まず法務を増やすことに専念された。法務のご縁の中から、熱心に耳を傾けてくれる檀信徒がでてくる。
師の努力は「プラスをかせぐよりも、マイナスを減らす」とのこと。

一般社会では常識的なことであっても、寺社会ではまだまだ遅れていることがある。法要も、何をやっているのか檀信徒にはよく分からない。というわけで、マイナスを減らす努力を続けている。最後に、わかりやすい法要の例として、口語による引導作法を実演して頂いた。臨場感あふれる語りかけは圧巻であった。

今回の私のねらいは、赤澤師との対話を通じて「開教の現場のスリリングな空気をお伝えしたい」ということだった。ちょうど赤澤師が林海庵に来寺されたときに、客間で対話するのと同じような最前線の雰囲気がカンファレンスの場でも出せれば、というのが目標だった。それを是非、ご参加の皆さまに感じて頂きたいーそのねらいはある程度実現できたのではないかと思う。

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