お土産の「苦」

住職のおはなし

    人間はこの世におりますと、良いものを求めて生きてしまいます。宇宙の法則では、良いものを求めると必ず苦というお土産がついてきます。 美味しいものを食べたり、きれいなお洋服を着たり、気持ち良い布団で横になったり。物質的な快楽は一瞬満足しますが、時間の経過と共に人間はこの快楽に飽きてしまいます。飽きるだけでなく、有難いことを感謝できなくなってしまう、普通のことを辛く感じてしまう、これがお土産の苦です。

 本当は自宅から駅までアスファルトが敷いてあるだけで有難いのに、私たちは感謝どころか交差点の赤信号が長いと不満を抱きます。 大曼荼羅御本尊は「宇宙は一つである」ことを顕します。つまり楽と苦しみが一緒になる世界です。 私たちが自分の人生を反省したときに、今でも忘れられない喜びというのは、苦しみや逆境を乗り越えた後の喜びであることに気付かされます。 良いものを求めて生きるということは、悪いものを求めないということでもあります。しかし苦労がなければ喜びもないのもこの世の真理です。

 聖地とは秋葉原や甲子園球場ではなく、事故や災害で多くの方が亡くなり、供養をして悲しみを乗り越えた地を聖地と申します。 仏さまの力は豊かさを求める願いではなく、辛い心境から立ち直る為の精神の祈り(マイナスの感情をプラスに向けて昇華させていく)にしか授かることができません。

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