段ボールの祭壇で出発

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 日蓮宗の国内開教師第1号の赤澤貞槙師(31)が一昨年10月に東京都国立市に設立した「国立布教所」が「一妙結社」として宗派から認証された。 開所以来「とにかく法華経の教えを伝えたい」との熱意で布教伝道に励み、宗門の被包括団体として認められ、赤澤師は教導に就任した。 1年余で縁のできた信徒は約100人。檀家制度に頼らず「選ばれる僧侶になれるように精進する」と意気込みを示している。  

 国立布教所はJR国立駅から徒歩15分ほどの住宅街にある2階建ての借家。信徒の寄付で一通りの仏具はそろったが、当初は段ボール箱に風呂敷を掛けただけの祭壇だった。しかし「立派な伽藍を備えた歴史ある寺院だけでなく、居酒屋のように気軽に入れるお寺があってもいい。仏壇があって僧侶が1人いればお寺になる」と焦りはなかった。 

 毎月開く読経と法話の会には知人が数人参加するだけだったが、徐々に人の輪が広がり、今は案内を出さなくても毎回20人以上集まるようになった。寺報は縁のできた100人以上に発送。共にお寺をつくっていこうと「育寺」が合言葉になった。在家出身の赤澤師は15才で出家。身延山高校、立正大学に学び日蓮宗僧侶となった。卒業後は都内の寺院で山務員を務めながら、法話の腕を磨いた。「とにかく布教させてもらいたくてしょうがなかった」。そして独立して法を説く場を持とうと本気で考え始めたときに、宗門の国内開教師募集を知る。「日蓮聖人がやれとおっしゃってるような気がした」  

 一妙結社には墓地はなく、檀家はいない。「これからはお墓の縁だけにとらわれず、経を読み法を説く僧侶を選ぶ時代。またこのお坊さんに頼みたいと思ってもらえるよう努力するしかない」との覚悟だ。一妙結社には、かわいい子供の声が響く。開所の3か月前に生まれ、間もなく2歳になる未月ちゃんだ。よちよち歩きで来訪者を迎える姿はまだ頼りないが、日に日にしっかりとしてくる足取りが、おのずと結社の歩みと重なってみえる。

国内開教師第一号の赤澤貞槙氏が平成22年11月に開いた国立布教所が日蓮宗と包括関係を結び、結社に昇格、18日に矢嶋泰淳東京都西部宗務所長が辞令を交付した。矢嶋宗務所長は「赤澤氏はまじめだから、気張りすぎずに柔軟にやってほしい。管区でも戦後、教会、結社がたくさん出来たが、そこに帰依した信者の高齢化が進み、廃寺、閉鎖が相次いでいる。そのような中、こうして新しい住職がでてくるは頼もしい」と赤澤氏の活動を喜んでいた。 

【記事紹介】中外日報2012年7月号掲載

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