サンデー毎日 伝統教団のリベンジ

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 よみがえる「宗教」

 東京都国立市といえば、一橋大学が拠点を構える武蔵野の学園都市のイメージが定着している。100平方メートルの一戸建てが4000万円代でも手に入る地域もあり、市の人口(約7万5000人)は微増が続いている。その南部、交通量の多い甲州街道に面して瀟洒な三階建てビルがある。看板がなければ、洒落たアートスペースとでもいえそうなこの建物が日蓮宗寺院の一妙寺だ。

 寺院の主は赤澤貞槙氏。35歳のイケメン僧侶だ。そして赤澤氏は仏教界では多数派の「僧侶の子弟」ではない。両親の反対を押し切って聖職者の道を選択した。いずれかの寺院に所属しつつ寺の主へと進む伝統教団の階梯も選択しなかった。目指したのは、自分の寺をゼロベースから作り上げること。大冒険である。

 「賃貸の一戸建てを手当てして、布教所を立ち上げたのが2010年です。この寺院は4年後に完成し、仏事の依頼は開設当初の10倍以上にまでなりました。」(赤澤氏)

 月収1万円の苦節期を乗り越えて、赤澤氏の一妙寺は毎年、100人ペースで信徒が増加している。つまり成長軌道にある。これは宗教者自身による画期的イノベーションというべき取り組みだ。都会に伝統仏教教団の新寺院ができる、にわかに信じがたい話だろう。寺院が消滅に向かう実態をリアルに活写した鵜飼秀徳著『寺院消滅』(日経PHP社)が、宗教界内外でも話題を呼んだばかりだ。村落居住人口の減少が檀家の減少につながり、無住寺院の発生を経て「寺院消滅」に向かう、などと説明されている。それでなくても仏教界は”衰退産業”で、新聞折り込み広告で募集のかかる墓苑ぐらいが目立つ程度だと私たちは考える。

 だが、赤澤氏のような取り組みは、個人の力だけで成し遂げられたものではない。氏が所属する日蓮宗の都市戦略の一つ、「首都開教」によって生まれたものなのだ。(続きは誌面を参照のこと)

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