佐渡御硯水のお話

住職のおはなし

皆さまはご家族や大切な方へ連絡をするときどのような方法を用いられますか?

①ラインで送る。
②万年筆を使う。
③筆ペンを使う。
④筆ペンではなく、墨をすって手紙を書く。

 などなど、現代ではいろんな手段がありますが鎌倉時代、宗祖日蓮大聖人の時代は「④筆ペンではなく、墨をすって手紙を書く。」の一択でした。日蓮聖人という方は非常に筆まめな方で、多くのお手紙を残された祖として有名です。

 その内容は家族を失った人の悲しみに寄り添うものだったり、病と闘う人への励ましだったりと人間味あふれる内容ですが、なかでも『観心本尊抄(かんじんほんぞんしょう』というお手紙は日蓮宗の教えの中でとりわけ重要な御遺文となります。内容はお題目の成仏とご本尊の関係を明らかにしたものなので、一妙寺住職が皆様のご法事の際、必ずご家族さまのお位牌の前で読み上げるお手紙です。この御遺文は日蓮聖人が佐渡ヶ島へ配流の途上、撰述されました。

 そして佐渡ヶ島には今でもこのお手紙を書かれた際に使われた井戸が残っております。表紙の写真はこの井戸の隣に建てられた題目碑なのですが、よくご覧ください。「南無妙法蓮華経」の「法」の文字がないことにお気づきでしょうか。

 仏さまの教えは私たちの悩みや苦労を取り除き、洗い清めることから法華経の教えを水に例えて「法水」と呼びます。清めるとはマイナスにおちたものを再びゼロまで昇華させる、元に戻すことであり、汚れを落とすことです。毎日みなさまが手や顔を洗うように。

 日蓮聖人はこの井戸水を使って墨をすり上記のお手紙を書かれました。非常に霊験あらたかな井戸です、この井戸水を「法水」としてあえて「法」の文字を石碑に書かずに、「南無妙(法)蓮華経」の「法」はこの井戸水であることを表しているのです。

 先日、佐渡ヶ島へ渡りこの井戸水を少し拝借して参りました。私もこの井戸水を使って墨をすりみなさまへのお札やお塔婆、お手紙を書きたいと思ったからです。日蓮聖人の息吹が少しでも皆さまの元へお届けできますように、気持ちを込めて本年も使命を全うして参ります。

 私たち僧侶はAIには負けません、本年もよろしくお願いいたします。

 令和8年1月1日
一妙寺住職 赤澤貞槙 拝

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