そういうことじゃないんだよのお話

住職のおはなし

 

みなさまは日常生活の中で「そういうことじゃないんだよ」と感じること、ありませんか。

「疲れてるんだったら、今日の夕飯、簡単なものでいいよ!といわれたとき」

「夫に愚痴を話したら、こうしたらいいんじゃない?と解決策をいわれたとき」

「なんでコンサート出る側じゃないのに、オシャレしていくの?といわれたとき」など。

 実はこれ、私たちお坊さんも同じなのです。今日は思わずツッコミをいれたくなるお寺のワンシーンをご紹介しましょう。

「お供え物のテイクアウト」
 お寺の本堂にお越しいただきお参りいただいた後、「お供え物、持って帰りますね」とおっしゃられる方がいらっしゃいます。私どもは「承知いたしました」といってしまうのですが、実はこれは間違いです。お供え物はお寺の御本尊様にお供えするものなので、持ち帰ってはいけません。

「御朱印スタンプラリー」
 お寺はなんとなく、「いつも住職さんが庭の掃除をしている」「だから事前連絡なしでも大丈夫」そんなイメージがありませんか。
 
 御朱印希望の方が唐突にこられ対応できず、やむなく「書き置き」で対応するとネットで炎上します。お願いですから御朱印は予約をしてお越しください。私たちも心を込めて皆さまの前で墨書きしたいのです。
 
 ちなみに御朱印とは本来、経典を写経したものを寺院に納めた代わりに証として受ける印でした。

 観光客の多い寺院となると、スタンプ帳やメモ用紙、ガイドブックの余白などに「御朱印ください」といわれることもあるそうで、お坊さんたちは「そういうことじゃないんだよ」となります。

「寺院が所有する敷地をマンションや霊園に」
 突っ込みの舞台は寺院さまへも及びます。近年は少子化や高齢化などを背景にお寺の運営は困難になりました。そこで寺院が所有する敷地をマンションや霊園に転換して経営を安定させませんかと業者に誘われます。

 そういうことじゃないんだよ。お坊さんならハードではなくソフトの部分で頑張りたい。お話しが簡潔だったり、感嘆するほどの立派な筆文字を書きたい。住職が努力する背中に檀家さんは手を合わせると信じます。

「非課税だから坊主丸儲け」
 これはお坊さんをしていて「あるある」ですね。お坊さんは元手がかからない上に税金がかからないから丸儲けといわれます。

 しかしそうではありません、宗教法人は確かに非課税ですが、これは支払先が国庫ではないというだけで、所属している宗派に収入に応じた義納金を支払います。これは一般企業のみなさまでいう法人税と同じであり、当然お坊さんも法人の職員である以上、月給制であり所得税も納めます。

 いかがでしたでしょうか。人の心は環境がつくりますので、同じコト、モノでもこれだけ解釈に違いがでてくるのですね。人間関係は難しいのでなかなか相手の気持ちはわかりませんが、「もらうよりもあげるほうが、幸福度が増す」それが仏教の教えです。今月もよい毎日となりますように。

一妙寺住職 赤澤貞槙 拝

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