仏具ご奉納のお話し

住職のおはなし

この度大田区在住の金富美枝さま、金光枝さまより一妙寺へ仏具のご寄進をいただきました。住職として厚くお礼申し上げます。

 今回、仏具をご奉納いただきました背景には「最後まで諦めず病気と闘った妹さまへのご供養のため」というお気持ちがございます。お寺の仏具には毎日僧侶の読経が染み込みます。それはやがて施主さまにとってはご功徳となり、故人さまにとってはご供養となります。

 人は誰しも口にはできない思いというのを秘めており、それは向こうの世界へ旅立たれた方はなおさらです。

 口にすれば楽になれる。しかし、喋ってしまうと災いが生じる。だからこの話は誰にも話さないで自分の胸の中だけにしまっておこう、そうやって他人に一言も語ることなく、向こうの世界までもっていってしまうお話というのが故人さまにはございます。
 
 「口にできなかったお気持ちが清められてほしい、不安な気持ちなら安心に転じてほしい」そのような施主さまの想いを背負い私たちは読経をお勤めします。

 マイナスのお気持ちを鎮魂させるというのは簡単なことではありません。元気な方で例えると、「人を許す」ということが鎮魂と同義であり、なかなか難しい境地であることがわかります。

 祈りや供養は合理と正反対のところにございます。能率や生産性、損得といった物質的な考え方ではなくて、姿かたちの見えない神仏や人の内面にそのお心を尽くしていただくことが基本にあり、施しをすることによって慰霊、鎮魂の流れが生まれます。

 一妙寺にいらっしゃる皆さまはそれぞれのお立場で、それぞれの思いをもって手を合わされます。皆さまの故人さま、ご家族さまを思うお気持ちに携わらせていただけることに深く感謝し、今年も頑張ってゆきたいと思います。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

  一妙寺住職 赤澤貞槙 拝

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