アウトレットパークのお話

住職のおはなし

私の妻は年に数度、アウトレットパークへ買い物に出掛けます。私が一緒に行ければよいのですが、なかなかお休みをいただくことが叶わないので娘や義母を誘って出かけていきます。

 帰宅した妻に「どうだった?」と尋ねると返事はいつも決まってます。「うーん、いろいろみたけど私のは買えなかった」。

 朝から夕方までアウトレットを歩いてるのに結局買うのは私や娘のものばかり。今日は自分のものを買ってきなよと送り出しても変わりません。いつも自分のものではなく、家族のものを購入してきます。

 そんな妻の人柄を引き出すアウトレットパークですが、三途の川のほとりにも店舗があることをみなさまは御存知でしょうか。

 人は亡くなると三途の川を渡ります。そのときに「アウトレットパーク三途の川店」でお買い物を楽しむことができます。

 このアウトレットパークで取り扱っている商品は地上と流通が異なるので、その仕様は若干異なります。販売されてるものは「才能」「容姿」「幸運」といったものばかり。つまりこの三途の川で購入する品物は来世に引き継ぐことができるわけです。

 僕はサッカーが上手くなりたいから「サッカーの才能を購入しよう」、私は美人に生まれかわりたいから「目鼻の整った容姿を購入しよう」、Z世代の方の表現を借りれば「前回親ガチャ当たりだったから、今回も幸運を手に入れよう」となるわけです。

 そんな魅力あふれる商品が並ぶアウトレットパーク三途の川店ですが、一番人気の商品はなんでしょう?

 一番人気の商品・・・それは「お守り」です。お守りといっても厄除けや安産といった普通のお守りではありません。自身を護ってくれるお守りではなく、地上に残してきた子や孫、家族を守護してくれるタイプのものが一番人気のようです。私の妻もアウトレットで家族のものを優先して買ってくると冒頭に申し上げましたが、人間は死後も家族のことを考えるようですね。

 私たちは大切な家族を亡くしますと、お坊さんにお経を読んでいただきます。しかしお経をあげていただくことだけがご供養ではありません。お墓参りにでかけたりお仏壇をきれいにしたり。いろんな形の供養があるなかで「向こうの世界旅立った父、母に守ってもらっていると信じる」ことも大切なご供養です。

 受験やお見合い、スポーツ等の大きな舞台で普段通りの力が発揮できたとき、好きな人と同じクラスになれるようおまじないをかけて叶ったとき、それはおじいちゃん、おばああちゃんがアウトレットパーク三途の川支店であなたの為に買ってくれたお守りのおかげかもしれません。
住職 拝

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