木鉦のお話

住職のおはなし

皆さまは「木鉦(もくしょう)」という言葉を御存知でしょうか?
木鉦とは日蓮宗のお坊さんがお経を読む際にリズムをとる法具です。叩くと「カンカンカン・・・」と神聖な音がこだまします。

 対する浄土宗系の和尚さんが読経をされる際にリズムをとる法具は「木魚(もくぎょ)」といいます。こちらは皆さまお馴染みですね。叩くと「ポクポクポク・・・」と優しい音を奏でます。

 先日、総本山身延山久遠寺のお膝元、身延線塩之沢駅近くにある「木地屋」の看板が掲げられた工匠さん宅へお邪魔しました。室内には木鉦を打ち鳴らす歯切れのいい音が響きます。それもそのはず。なんとそこは全国で唯一の木鉦工房でした。

 木鉦を制作する工程をお尋ねすると、最初は木の切り出しから始まるようです。使うのはケヤキ、サクラ、カエデ、材質によって見た目だけでなく、音が異なるので興味深いですね。

 荒く削った後は1年間の乾燥期間を設け、いよいよ木鉦の形に削っていきます。そして木鉦は中が空洞でなければ音を発することができません。叩く面が厚いと高く、薄いと低い音になります、「微妙な加減が難しく、とても神経を使う」とのこと。
 
 親子二代で切り盛りされている小さな工房には、木鉦づくりを通じて父の背中を追い求める息子さんの覚悟を垣間見ることができました。「基本、この仕事が好きにならないとできない」という工匠のお言葉には作業の苦労と困難が容易に想像できます。

 今回、初めて私たちが普段手にする仏具を制作するお仕事現場を見学することができ、私はとても良い時間を過ごすことができました。そして、伝統を守りながらも今の時代にあった技術を次世代へ継承していく大切さを学ぶことができました。

 お世話になりました職人さんたちの顔を思い浮かべながら、又、私自身も木鉦へのこだわりを大切にしながら、これからも仏事や日々のお勤めに励んで参りたいと思っております。

 一妙寺の本堂には大きさや材質の異なる様々な木鉦を置いてあります。皆さまへご覧いただくことができますので、どうぞ職人さんたちの仕事を感じてみてください。

一妙寺住職 拝