お内仏のお話

住職のおはなし

みなさまは「お内仏(おないぶつ)」という言葉をご存じでしょうか。言葉の意味からすると何か内緒の仏さまというか、普段はお開帳されない秘仏を連想させる言葉に感じますがそうではありません。

お内仏とは住職家族のご先祖さまをお祀りするお仏壇のことを指す言葉です。

私は大学時代、通学しながら東京都心にあるお寺さまへ住み込みで働かせて頂いたのですが、その生活は「誰よりも早く起きお寺の門を開け、誰よりも遅くに床に就き休む」という、まさに身も心もお寺に従事する僧道生活でした。

実家がお寺でない私にとって、この住み込みの生活は大変勉強になりました。お寺の年間行事等の一年間の流れ、お檀家さんに支えらているという基本構造、そして何よりもお葬式やご法事といった仏事を直接経験させていただけたことが何よりの自己研鑽となりました。

「お内仏」というお寺の住職さまのご先祖さまを祀るお仏壇のことを知ったのも、そんな勉強だらけの寺院生活でのことでした。お寺には「本堂」というご先祖さまをお祀りする専用の立派な施設があるのに、何故わざわざ本堂ではなく、別室に仏間を設けているのだろうと当時は疑問に思ったものです。

大人になってから鑑みると、それは寺院の本堂は住職の私物ではないということが事由だとわかります。その為、住職家族のお位牌は本堂ではなく、別室に仏間を設け、お内仏と呼ばれ

る祭壇に住職家族用のお位牌をお祀りするわけです。

私は以後自分のお寺を持ちましたが、教えに習って、きちんと内仏をつくり、お勤めをしております。そしてその時間をとても大切にしております。

25年前僧侶になるために私を身延山へ入学させてくれた母の位牌を祀っているのですが、お内仏の前に座ると自分がこの世に生まれた意義を感じることができます。お内仏に礼拝し、お勤めをすると母親から「今日も頑張るんだよ」といわれている気がします。

今はコロナ禍で大変ですが、そんな毎日でも頑張ります。何故なら私が今日生きている一日は母がどうしても生きたかった一日かもしれないから。

お内仏は本堂とは違う風土でお勤めすることができる、特別な空間です。
一妙寺住職 拝

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