檀家制度の廃止

住職のおはなし

  お陰様で一妙寺はお盆を迎えますと、多くの方より読経のご依頼をいただきます。お盆だけではありません、春秋のお彼岸でも沢山の方がご参列くださり、「住職さん来ましたよ」と一妙寺の行事へ足を運んでくださいます。  

なぜ皆様に支えていただけるのか、考えてみました。  

お花がきれいだから?伽羅のお香を焚いているから?奥さんの愛想が良く美人だから?  

いいえ、そうではありません。みなさまひとえに「大切なご家族さまの供養のため」にいらしてくださるのです。 こういってはなんですが、仏事を看過しても「仏様は知らぬふり」をされます。なぜなら仏様は「ほっとけ、ほっとけ」といって、ご自分の口から「供養をしなさい」とはおっしゃらないからです。  ところが皆さま、わざわざお金と時間をかけて仏事をお勤めしてくださっているのです。「こういうことはきちんとやらないと」「高齢になり身体の具合がよくないけど、お寺さんへ伺う日に照準に合わせ、体調を整えております」というお言葉をいただきます。優しい皆さまに囲まれた私共は本当に幸せです。  

以前は読経の場面になりますと供養の為に今まで学んできたことを発揮することを良としておりました。故人様が女性でしたら女人成仏が説かれている経を読んだり、お盆でしたら日蓮聖人がかかれた「盂蘭盆御書」というお手紙を拝読したりといった具合です。

しかし最近は「実施せずともお咎めない仏事をみなさまわざわざ勤められている。そんな心根の温かい方に囲まれた一妙寺は大変な果報寺です」という気持ちでお経を勤めております。お寺が皆さまに幸せをお届けしなくてはいけないのに、皆様が一妙寺を助けてくださっているのです。  檀家制度に守られ、営業活動をしなくても仏事のご依頼をいただけるお寺は、意識を向けていても知らず知らずのうちに檀家の方がお参りしてくださること、お布施を包んでくださることが常識的なことだと思ってしまうことを修行時代に学びました。

一妙寺はあえて檀家制度を設けず、この気持ちを忘れないよう心がけてゆきたいと思います。

 

 

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