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「あの世」を語る僧侶たち 宗教復活の鍵 「寺院消滅の現状が浮かび上がってきたが、解決の糸口はどこにあるのか。さまざまな取り組みをしている僧侶にきいた」  

自分のお寺を持っていなかった在家出身の赤澤貞槙さん(34才)は、信徒ゼロからお寺を建立した僧侶だ。2010年に東京都国立市内の賃貸物件の民家の一室に布教所を開き、駅前での辻説法から始めた。他の僧侶の紹介で行っていた葬儀の説法も評判になって信徒が増え、2014年11月ついに新しいお寺「一妙寺」を建立した。  

赤澤さんは葬儀で、日蓮宗の教えをもとに、亡くなった方や参列者に葬儀の意味や魂の行き先をこう伝えている。「人間は肉体と魂で構成され、死後、魂は肉体から抜けてあの世へ還ります。生まれるときは十月十日なのに帰りは四十九日です。ここに僧侶の仕事があります。僧侶の唱えるお題目や皆様の祈りで魂が運ばれるのです。

「人まねの説法では言葉に魂がこもらない」

赤澤さんが説法に力を入れるようになったきっかけがある。都内の寺に勤めていた時代、信徒から「僧侶は葬式で何をしてくれているのか分からない」と聞かれたことだ。 「亡くなった方の魂をこの世からあの世へ送るための教えが、お釈迦様の経典にあります。人まねの説法では言葉に魂がこもりません。自分で納得したことを、自分の言葉で話すことを大切にしています。」 赤澤さんは「あの世はあると思います」と言い切る。

「科学主義の世の中では、目に見えないものは無下にされがちですが、科学的に証明できないものもいまだに多い。宗教によってあの世の表現の仕方は違っても、根本は同じだと思います。  赤澤さんは「肉眼でわからない世界を普通の人にわかるような言葉で説明するのが、お坊さんの使命です」と話す。 仏教界の衰退の閉経にも、あの世について語らない僧侶への疑問がありそうだ。「あの世」に向き合うことに、宗教復権の糸口があるのではないだろうか。

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