浄土宗が国内開教研修

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 浄土宗社会国際局は2月19日東京・港区の浄土宗宗務庁で国内開教使研修会を開催した。他宗の国内開教使を招き、他の伝統仏教教団の開教師への支援策など国内開教への取り組みを学んだ。  今回の研修では、日蓮宗で初の「国内開教師」に認定された赤澤貞槙師と、布教拠点設立後6年で本堂を落成した本願寺派の吉井誠光氏を招聘し、国内開教の今を伝えた。  

 赤澤師は、平成22年に東京都国立市で布教活動を開始し、昨年布教所から結社へと昇格。開教師を志したときは「仏具や檀家もなく、あるのは健康な身体と電話のみ。ほぼゼロからのスタート」だった。就任からこれまでの2年6か月で寺報を受け取る信徒が250人に達し、宗門の支援が大きな力になっているとの認識を語った。  

 布教の目的を果たすためには、寺院と縁がない人と結縁することが必要であり、そのため現在一番力を注いでいるのが葬儀であると説明した。 「葬儀は僧侶として最大最高の布教の場。遺族だけでなく、葬儀屋さん、仕出し屋さんにも法を説くつもりで法話し、引導文もわかりやすく一手間加えています」と語り、理想は「あのお坊さんにお経をあげてほしい。あの人に話をしてほしいというお坊さんになること」と抱負。  

 実際に葬儀で特に評判の良かった引導文を実演。一般にわかりやすい葬儀を心がけ、「ある葬儀であなたの話を聞いたと葬儀屋さんや施主さんから法事の紹介を受けるようになった」と話した。  吉井氏は海外開教の経験を活かし、サークル活動を入口とした布教の一例を提示。子育て世代が多い地域の特性に合わせ、子育てサークルや寺子屋スクール、ボランティア活動などを坊守と協力して開催し、地域との縁を結んだことを紹介した。  

 一方で都市部の葬儀を取り巻く環境に関しては「その場限りで安く済ませたい」「葬儀後はお寺と関わりを持ちたくない」という消費者思考が横行し、葬儀後も縁を保ち門徒や信徒につなげることが難しくなっていると指摘。  御布施についても「未包括寺院の葬儀社への営業や法務派遣会社の乱立により御布施は下落傾向が続いている」と分析し、都市部では御布施が6年前の3分の1、4分の1になることが増えてきたと危惧。参加者からはこのくだりに思わず「(我々と)同じだ」との嘆息も聞こえ、都市部での開教の厳しさをのぞかせた。

【記事紹介】仏教タイムス2013年3月号掲載

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