国立布教所の1年振り返る

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 日蓮宗の在家出身僧侶を中心とした会「ミトラサンガ」の北関東ブロック総会と研修会が7日、さいたま市浦和区の埼玉県仏教会館で開かれた。研修会の講師は、日蓮宗最初にして今のところ唯一の国内開教師として、東京の国立で布教する赤澤貞槙師。平成22年11月から同地で布教を開始し、翌年10月30日までの1年の活動を振り返った。  

 赤澤師は在家出身だが、子供の頃からの願いである「お坊さんになること」を叶えるため、身延山高校から立正大学に進学。在学中から卒業後は都内の複数の寺院に奉職した。 「この時、様々な僧侶の法話を学んだことが布教に活かされている」と赤澤師は述懐する。 教線拡張と地域社会への貢献に夢を抱き、宗門の国内開教師募集に名乗りを上げた。国立市は、人口減少社会においても20年後の人口増加が見込まれている貴重な地域だ。  

 寺院設立後の1年間で合計137回の法務を勤め、年中行事や団体参拝旅行、寺報の発行も積極的に行った。今では信者も50名を数えるほど。ゼロから始めた布教所がこうなったのも、ひとえに赤澤師の積極的な活動のたまものだ。  

 だが、難題も多い。一つは宗教法人格を得ていないこと。法人格取得の為には固有の財産が必要だが、現在の一妙寺は2階建ての2LDKの借家。しかも、いまでも大家からは全面的に認められているわけではなく、トラブルがあれば宗教活動停止も要求されかねないという。 「宗教活動が活発になると、賃貸では辛い。例えば、壁に釘を打つこともできない」(赤澤師)ので、近い将来、近郊に土地を買い、堂宇の建立を目指している。 だが民家のお寺なので良かった点もあるという。「玄関の扉の次の部屋が御本尊のある本堂(仏間)で、その隣が客室。つまり、来る時も帰る時にも本堂を通らなければならない。もちろん御本尊様の前では必ず一礼していただきます。これで『自分たちの仏様』という意識に信徒さんが目覚めたのではないでしょうか」と赤澤師。このように、信徒と共にお寺を作っていく「育寺」をしていきたい、と抱負を語った。  

 こうした赤澤師の経験と分析を、ミトラサンガの会員は熱心に聴講。会員からは「これだけ赤澤上人が真剣に布教をやっておられるのに、宗内でも活躍が知られていない。宗門の援助や広報はまだまだ薄いのではないか」と、国内開教への一層の宗門支援を求める声もあがった。

【記事紹介】仏教タイムス2012年3月号掲載

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