虫供養のお話

夏が近づくと薬局の店先には蚊帳や蚊取り線香などおなじみの虫除けグッズが並びます。最近では赤ちゃんやペットがいらっしゃるご家庭に優しい、薬剤や煙を使わない製品が人気のようです。

虫が光に集まる習性を利用し、紫外線ライトで虫を誘因します。近寄ってきた虫をファンで吸い取り、底部のカゴに虫を集める仕組みです。

私は子供の頃、祖母より「一寸の虫にも五分の魂」といってどんなに小さかろうとも、虫には霊魂があると教わりましたので、この新型の蚊取り器をみたとき、日本人らしい優しい製品だなと思いました。

6月4日は「むしの日」、皆様は虫供養という言葉をご存知でしょうか。
農家の方がなさっている、米作りや野菜作りで犠牲になった田畑の虫を慰める供養のことを申します。

日蓮聖人の「戒体即身成仏義」というお手紙には、家畜や草木すべてが仏菩薩であることが説かれております。
私たちは人間だけでなく、虫や家畜など生きとし生けるものすべての霊を供養しなくてはいけないという教えです。

その教えは時を経ても、倫理観として守られました。明治期の日本の養蚕が盛んだった頃にたくさん建立された天蚕(てんさん)供養塔などはその典型です。

蚕は日本が近代化を進めるうえで重要な基幹産業となりました。主要な外貨獲得源となり、日本近代化の大恩人ならぬ大恩虫です、そのために虫にもかかわらず、呼び捨てではなく「おかいこさま」と呼ばれるようになりました。

そして日本人は、蚕のような立役者だけを供養しているわけではありません、現在でもアース製薬、フマキラーといった名だたる殺虫剤メーカーは毎年、「虫供養」を行っています。

「人間の生活のために虫退治の仕事に励んでいる、それによって私たちは生活を成り立たせている・・・」殺虫剤メーカーのトップたちは、虫の霊を慰めるために深々と頭を垂れます。
殺虫剤は開発が進み、虫を退治することから、虫を寄せ付けず排除していく方向に進んでおります。

この虫供養は日本だけの風習であり、愛知県では無形文化財に指定されております。400年以上続くこの伝統行事を地域の方はとても大切にされております。虫だけに無視できないということでしょう。


2015年05月01日