建築工事の始まり

文豪の夏目漱石は胃潰瘍を患い、療養先のお寺で生死の境をさまよったらしい。大病をおしのけて、口にした粥の味はどれほど五感に染みたであろう。かくいう拙僧も数年前に100日の荒行を終えたときに食した粥の味は今でも鮮烈に覚えている。荒行を終えた安堵感と共にのどを抜け、食道を震わせた。

そんなお粥も今や堂々の健康食である。消化によくて減量にも向くので、本格派からレトルトまで幅広く店頭に並ぶ。元気な人から病弱な人まで、さらなる進化と充実をめざして今後も人々の胃袋を満たしていくであろう。

 一妙寺の建築も長かった確認申請がようやく認可され、工事が進められている。新しい本堂は瓦と畳を使わないシンプルな意匠図となった。塔やステンドグラスを用いたキリスト教の教会が油絵なら、破風造りと石庭の寺院は水彩、そして一妙寺の飾りのない本堂は水墨画となろうか。
 
予算の関係で天井に龍を画いたり、柱に鳳凰を彫刻をすることができなかったが、その分法話や天然香木といった癒し効果を頑張りたい。質素で薄味であるがゆえ、粥のような美味もある。

 100日の荒行を終えた拙僧の食した粥は変哲のない白粥であったが、荒行を終えた安堵感と空腹が何よりの具であった。淡いが深い粥のような本堂で、新しい寺院の魅力を発信していきたい。

2013年08月01日