供養のお布施

10年以上の前の話、当時私は立正大学へ入学し、都心のお寺に住み込みの書生として仏教を学んでおりました。

東京のお盆は7月なので、8月になりますと地方都市のお盆供養の応援にいきます。長崎県の沿岸部にあるお寺さんのお手伝いをさせていただいたときのことです。

お一人でお住まいでいらっしゃるおじいさんのお宅にお盆供養のお勤めに伺いました。若いころは漁師をされていたとのことです。

ランニングシャツにステテコといういでたちのおじいさん、掃除や洗濯をされないのでしょうか、部屋には虫が飛び、異臭が漂います。畳は陥没し、冷房器具のないお宅には夏の暑さが一層に部屋の悍ましさを引き立たせます。

そしてそのおじいさんのお名前が「浦島太郎さん」ときたものですから、もう漫画の世界です。

なんとかお仏壇を整え、無事にお盆の読経を終えることができました。するとおじいさんは私に裸のままの1000円札1枚を差し出してくださいました。

私はおじいさんを不憫におもい、「お布施をいただきどうもありがとうございます。でもこのお金で何か着るものなどを買ってください。お気持ちだけいただきましたので。」御辞退申し上げました。

するとおじいさんは私に一言、こうおっしゃいました。

「それはうちの家内に捧げるお布施です」

私は本当に冷や汗をかきました。確かにお布施は仏さま、亡くなった奥様に捧げられるものです。私は無意識のうちにお布施を自分の報酬であると、お盆供養を勤めた読経の対価として受け取っていたのです。

お経を読むことは労働ではありません、10年以上経った今でも、お盆を迎えるとおじいさんを思い出します。私にとっては心の師です。

2013年04月15日