仏像の内部

鎌倉時代の僧侶が書いた諷誦文(仏事の時に、趣旨や供養の内容を述べる文)を読んでいますと「仏舎利、ならびに法華経を奉籠供養す」という文章に出会うことがあります。

仏舎利とは「ぶっしゃり」と読み、お釈迦さまの御遺骨のことをさします。
奉籠とは、納めるというような意味ですから、お釈迦様の御遺骨と法華経を納めましたという文章になります。

どこに奉籠したか、その場所に関して具体的な記述はありませんが、仏像の頭部や腹部に納められたことが今日ではうかがいしれます。仏像に内部に小さな空間を設け、そこに仏舎利と法華経を納められた・・・永い年月を経て大切に守られてきた仏像の神秘的なお力に魅了され、理由なく惹きつけられるのは、こんな所以からでしょうか。

私が毎年8月のお盆の時期に、御修行させて頂いている富山県のお寺さんには室町時代の「鍋かむり日親上人」お手彫の鬼子母神像が安置されております。

その御神体もやはり胎内に安置されておりました。鬼子母神像の胸部に観音扉があり、そのなかにお手彫の御神体が鎮座されている仕組みです。

上記の文のような法華経が仏像に納入された例は少なくないようです。これは鎌倉時代の人々がいかに法華経を大切にされてきたかを示すものであり、当時の人々の篤い信仰心の一端をうかがえます。

「アート」としての仏像ではなく、そこに宿る人々の気持ちも汲み取りたいものです。

2011年05月01日